『思いわずらうことなく愉しく生きよ』
一作目は私が一番好きな長編小説のひとつ。
江國 香織 著
まず、江國さんの作品はタイトルがいい。
代表作の『号泣する準備はできていた』や『冷静と情熱のあいだ』(辻 仁成共著)も、つい自分の言葉として口に出したくなるほど。
(特に『冷静と情熱のあいだ』はファンが多く私にとってもお気に入りの作品。後日紹介しようと思う。)
『思いわずらうことなく愉しく生きよ』は、裕福な家庭に育った三姉妹のそれぞれの人生・恋愛を描く物語。
長女の麻子は温厚で家庭的な性格。現在は専業主婦で夫のDVを誰にも言えずにいる。
次女の治子はバリバリのキャリアウーマンで、何事もはっきりさせたい几帳面な性格を持つ。自称スポーツライターの恋人と同棲中。
三女の育子は自由奔放な性格だが姉妹の中で一番家族思い。複数のボーイフレンドを持つ。
それぞれの年齢は書かれていない。
三姉妹が育った家の教訓こそが、「思いわずらうことなく、愉しく生きよ」。
「家族ものか。どうせ家族愛でも描かれるのだろう」と思いきや、まったく違うのだ。
性格も悩みも異なる三人が、それぞれ自分のポリシーと家訓を胸に生きる。
弱く、強く、いとおしい女たちの生きざまを描いた物語。
主観が三姉妹だけでなくその母親、姉妹を取り巻く男たちなど様々な人物へと変わっていくため、女性だけでなく男性にも愉しむことのできる作品だと思う。
ぜひ、ご一読を。